武士道の「美意識」を学ぶ。

菊池一族と延寿鍛冶展(元寇編2)

資料:蒙古襲来絵詞より

菊池一族と延寿鍛冶展(元寇編その1)はこちら

 

文永11年(1274)10月3日

高麗の合浦(がっぽ)を出発した

2万8000人の蒙古兵が

 

遂に攻めてきた。

 

対馬、壱岐の少数の守備兵を玉砕し

10月19日

元軍の大船団が博多湾に侵入。

 

その時

 

対馬で殺害された女性の手に

穴を開けて縄を通して

 

船に吊るしていたと言われる。

 

 

 

 

そして海上で一夜を明かし

 

翌20日、博多湾の西部

今津、百道原(ももちばる)に上陸。

 

百道原(ももちばる)とは

 

現在の「シーサイドももち」付近なので

福岡ドームがある場所である。

 

 

 

さて、

 

菊池一族は、九州全土から集結した

御家人(幕府直属の武士)

約5000人と共に

 

博多湾の海岸線約30kmに

防衛線を張ったが

 

圧倒的な蒙古軍の兵員数の前に

守備を衝かれ

 

日本軍の左翼陣が崩れると

蒙古軍はそこから次々と

本体を上陸させたという。

※資料:世界帝国が攻めてきた元寇

岡本顕實先生著より

 

 

その後、麁原山(そはらやま)

現在の西新そばの祖原公園に

蒙古軍は本陣を定めた。

 

 

写真は福岡の

「志賀島ビジターセンター」に展示してある

「元軍侵攻と防衛」についての図。

 

よく見ると

 

箱崎宮、住吉神社、百道など

幅広い場所から上陸したことがわかる。

 

福岡に住んでいる人は

距離感があると思うので

この図を見て考えていただきたい。

 

 

ある日、突然

 

箱崎宮、住吉神社、百道に

このような元軍が上陸し始めたとしたら

どうするだろうか?

 

 

 

ちなみに

菊池一族は

住吉神社から赤坂周辺の護衛を

任されていたというから、

 

ここは

私達が居合道で

稽古させて頂いていた

福岡「護国神社」の周辺なので

とってもリアルに想像してしまった。

 

実際に今の福岡の街は、

黒田長政が埋め立てたので

もともとは海だったところも多い。

 

住吉神社周辺には

昔、海があった。

 

ここから菊池武房率いる菊池一族は

麁原山に向って進む。

 

恥ずかしながら

菊池一族と延寿鍛冶展で調査する前は

知らなかった・・・

 

そう考えると実際に麁原山が

現在どのようになっているのか

急に気になって

 

当時の菊池一族が進んだであろう道を

行ってみることにした。

 

 

 

写真は福岡市天神。

 

当時は、

このような道があったわけではなく、

海もあったりして

菊池一族が

どのように進んだかは解らないが

 

警固していた住吉神社から

赤坂周辺へ向ってみることにした。

 

 

 

 

ここは赤坂周辺。

 

この道を真っすぐ行くと

福岡城と護国神社が見えてくる。

 

 

 

カーナビでは

麁原山(祖原公園)へは

護国神社から左を差した。

 

 

資料:yahoo地図

 

ここで、当時の戦いの状況を説明すると

 

数を頼む元軍は

後続の軍勢を分けて軍船を博多部へ。

 

麁原(そはら)に上陸した兵は

現在の福岡市中心部

鳥飼、別府、赤坂へ東に強襲する。

 

この時、

菊池一族を含む日本軍は

劣勢だった。

 

有名な話しだが、

 

それまで一騎打ちの戦いが主流の

日本軍には、

鉦(かね)や銅鑼(どら)や

太鼓を打ち鳴らして

集団で進んでくる戦法の前に、

 

馬が驚いて暴走し、

「われこそは〜」と打ってでる豪の者も

集団の中に包み込まれて討たれていった。

 

 

 

 

さらに

「てつはう(てっぽう)」が登場する。

 

これは、それまで

火薬というものを知らない日本人にとって

最強に恐怖だったことは間違いない。

 

しかし、

 

そんな戦況の下、

 

死を恐れずに勇敢に闘った武士がいる。

 

 

 

それが

 

菊池武房である。

 

 

実際に

「蒙古襲来絵詞」を描かせた

竹崎季長(たけざきすえなが)の

「蒙古襲来絵詞」では

竹崎のすぐ近くに菊池武房は描かれている。

 

 

二人とも、この時、29歳で

武士としては自信があった時期だろう。

 

 

また、菊池氏の

九代目式部大輔隆泰の次男

赤星・播磨守(はりまのかみ)

有隆(ありたか)という武士が

 

この元寇において武功をたて、

蒙古の大将を捕らえて

縛り上げにしたので

天皇は感心されて

桐の御紋を有隆に下賜された。

 

そして有隆は肥後国玉名郡の

内の七百町並びに豊前国規矩(きく)郡と

肥前国神崎の庄を賜わり、

 

南関町にある

大津山に築城して住居を構えたことが

江戸時代の熊本藩士「井澤長秀」が記した

「南関紀聞」に書かれている。

 

 

さて、

到着したのは祖原公園。

 

ここが蒙古軍が本陣と定めた場所。

 

 

 

 

歩いて上のほうに登ってみると

 

何やら石碑が立っていた。

 

 

 

 

その名も「元寇遺跡」。

 

恥ずかしながら

福岡に住んでいながら

ここには始めて来た。

 

この周辺は、しょっちゅう通っていたのに

興味がなければ気づかない。

 

ここで

菊池一族が蒙古軍と闘ったのか

と思うと知らないことだらけ。

 

実際に蒙古軍は

この麁原山から

赤坂まで追撃した後、

さらに箱崎八幡宮も焼き、

博多の町は焼け野原になったという。

 

 

 

それだけ強い蒙古軍だったが、

蒙古軍の方にも問題はあった。

 

彼らは高麗で作られた即席の戦艦で、

兵も寄せ集めで士気も低く、

戦略もよくない。

 

そんな中で、意外にも

日本の武士が強いものだから

なかなか苦戦して

軍議が開かれ撤退することになる。

 

その後に神風が吹いたと言われているが

実際にどのような風だったかは

わからない。

 

 

祖原公園から見た景色。

奥に福岡タワーが見える。

 

今でこそビルが立ち並ぶが

当時は何もなく、遠くに海があったので

景色は違うが

実際に、この場所で菊池一族を含む

多くの武士が闘ったのである。

 

 

菊池一族も

ここからの景色を見たのだろうか。

 

それにしても

この戦いの経験は

菊池武房に大きな影響を与えた。

 

彼が京都から招いた「延寿鍛冶」にも

間違いなく蒙古軍との闘い方を伝え、

戦闘に役に立つ日本刀を注文したと思う。

 

その実戦的で役立つものが

のちの「同田貫」にも繋がっていくのか・・・

 

そんなことを考えながら

この祖原公園に立っていた。

 

700年前、博多が

主戦場になったことを振り返り

勇敢に闘った武士のことを想う

大切な一日になった。

 

 

 

菊池一族と延寿鍛冶展(元寇編その1)はこちら

 

菊池一族と延寿鍛冶展は

2017年4月1日(土)〜5月7日(日)まで

菊池市の菊池夢美術館にて開催します。

 

蒙古軍と勇敢に闘った

菊池武房公の想いがつまった

名刀達が勢揃いする展覧会です。

 

ぜひ、「菊池一族と延寿鍛冶展」で

延寿鍛冶の魅力を知っていただければ

幸いです。

 

 

詳しくは菊池観光協会公式サイトまで

 

資料:世界帝国が攻めてきた元寇

岡本顕實先生著より

■西日本シティ銀行

博多に強くなろうシリーズno.10

元寇 川添昭二先生

■井澤長秀「南関紀聞」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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