平成に生きる武士

 

武士道美術館史上

初めての体験でした。

 

この平成の世の中に

10年以上も「武士の姿」で生活し、

 

携帯電話を持たない。

TVもインターネットも見ない。

電車もバスも乗らない。

 

持っているのは

財布と矢立と懐中時計

 

自分の足で

神奈川県から

九州まで歩いてきた男・・・

 

本日は

平成に生きる

一人の武士をご紹介いたします。

 

 

彼の名は「秋月謙一」さん。

 

武士道美術館をご覧の皆様は

いつも私達が

袴姿で居合をしている写真を

見ていらっしゃると思います。

 

当然、私達も稽古が終われば

普通の洋服に着替えています。

 

また

武道を志した皆様も

道場では必ず道着に着替え、

稽古が終われば、

洋服に着替えると思います。

 

しかし、

秋月さんが洋服姿に

着替えることはありません。

 

「365日」この武士の姿で

10年以上生活してきました。

 

それは

京都の太秦・映画村に

勤めているわけでもなく、

誰かに強制されているわけでもなく、

 

「武士の姿」で生きている。

 

 

私が、最初に

「熊本県の水俣市にサムライがいる」

と聞いたのは1年前、

 

親戚が水俣の町で

いつも

「サムライの格好をしている人がいる」

と教えてくれました。

 

そして

昨年の年末

 

私達「誠心館道場・水俣分館」の

小林先生と

 

秋月さんが出会い

誠心館道場に入門。

 

初めてお会いすることになりました。

 

 

初めてお会いした印象は

 

江戸時代や幕末などの武士が

現代にタイムスリップした感覚。

 

 

お会いして

会話すればするほど

礼儀正しさ、姿勢の良さ

長時間の美しい

正座姿に驚かされます。

 

この日は、誠心館道場の

「初抜演武会」でしたので

多くの剣士が集まっておりました。

 

当然、全員

秋月さんのことは知りませんし、

 

とくに何の説明もしていませんので

普通に居合を見学に来た

新人の剣士のようにも見えます。

 

 

しかし

何の説明も必要なく

 

次の瞬間

初対面の私達に

 

秋月さんの披露される「能」が

強烈なインパクトを与えました。

 

 

始った途端に

まるで道場が揺れるように感じた

その声。

 

人間の中に眠っていた

古い記憶がそう感じさせるのか・・・

 

心の中で

何かが呼び覚まされるような

懐かしい響き。

 

並大抵の修練で

体得したものではない迫力、

道場の中に緊張感が広がります。

 

 

 

誠心館道場の剣士は

全員釘付けになりました。

 

この日

舞ってくださったのは「高砂」。

 

上手く見せようとか

相手の気を惹こうという

無駄な邪心がない

 

まるで無心の姿。

 

その圧倒的な迫力に

全員が飲み込まれました。

 

 

 

 

最初は「水俣のおサムライさん」

という情報だけが私のところに入り

1年が経過する中で

 

秋月さんは

■字が達筆である

■古文書を読む

■英語が堪能である

■ピアノでクラッシクを弾く

 

という情報が入ってきました。

その全てが事実だったのですが

 

スマートフォンや

インターネットが進化する時代。

 

そして

新幹線が走り

飛行機が飛ぶ時代に

 

その便利さを捨て、

 

昔ながらの「武士の生活」を

実際に行動している人に

お会いする機会など

今だありませんでした。

 

だからこそ

直接会って

お話を聞きたかったのです。

 

 

 

私は聞きました。

 

携帯電話も物も

特に持たず、

 

諸国を旅する生活は

不便ではないですか?と

 

すると秋月さんは

ゆっくりとした声で

 

不便ではなく

連絡も「手紙」があれば

どこでもできます。

と答えられ、

 

物に全くとらわれていない

生き方をしているのがわかりました。

 

 

小林先生のお話によると

彼は携帯電話がないからこそ

約束の時間をきっちり守るとのこと。

 

きっと江戸時代などは

携帯どころか

電話もありませんから

 

会った時に

待ち合わせを約束したならば

必ず時間を守らなけらば

出会えなかったはず。

 

とは言え、今は平成。

なぜ?この時代に

江戸時代と同じような武士のスタイルを

貫いているのか?

気になりました。

 

 

秋月さんは神奈川県のご出身。

 

中学生の頃にお父上の仕事の関係で

アメリカに住むことになりました。

 

アメリカで生活していた時に

 

日本に帰った時には

日本人らしく和服で生活をしようと

考えていたとのこと。

 

その後、

日本に帰国し、

大学へ進学。

 

そこで「能」に出会い、

日本の伝統文化を学びます。

 

大学を卒業し、

その時の家賃に使うための

数万円が貯金にあった時、

 

このお金で

次の月の家賃を払うか

それとも

 

そのお金を使って

和服を買うか

を考えた結果

 

和服を買うことを選択します。

 

そのきっかけが

現在の生活の始まりになった

とのことでした。

 

それから、旅をすることを決意。

 

当然、働くこともあります。

人に親切にしていただきながら

宿泊させていただくこともあります。

 

また、

その生活の中では

車や電車などに

できるだけ乗らずに徒歩で移動。

 

様々な苦労も多かったと思います。

 

 

それにしても

すごい決断。

 

いやいや

誤解されることもあったでしょう。

時代とは全く逆の流れ。

 

まず、私の身の周りで

携帯電話を持っていない人など

いない・・・

 

でも、確かに

昔はみんな持っていなかった

そんな

いろんなことを考えました。

 

 

また、

絶対に野宿はしない

と決めて旅を始めたそうです。

 

実際に、

多くの皆様にお世話になったそうですが

秋月さんの「感謝」する言葉と

教養と礼儀正しさがあるからこそ

様々な人が助けてくれたのかもしれません。

 

また、

ひょっとしたら

人は皆、どこかで秋月さんのような

生き方に憧れを持っているのかもしれない。

とも私は感じました。

 

先日、新聞で

現代を生きる若い世代に

「夢は何ですか?」と聞くと

 

「お金」「年金の不安」

「老後の心配」などの問題で

夢がない人が増えた

なんてことが書いてありました。

 

また、

スマートフォンを見ながら、

仲間とつながる人は

どんどん増え、

 

私もインターネットのおかげで

様々な活動や情報を吸収させて

いただいておりますが、

 

考えれば

便利なはずの携帯電話があることで

日曜日に仕事の電話が入ったり、

 

車ばかりで移動することで

運動不足になったり、

 

快適なセキュリティーのおかげで

隣りに住む人とのコミュニケーションが

なくなっていたり・・

 

便利を追い求めていた結果

大切なものが失われているようにも

感じられました。

 

秋月さんの物を所持しない

「捨てる発想」に

大切な何かを気付かされたような

気がしました。

 

 

そして

誠心館の演武会が終わり、

 

私も少しだけ

秋月さんから「能」を習いました。

 

初めての「能」は

居合道に通じるところあり、

また、

全く違う動きありで

とにかく難しい。

 

しかし、お優しい秋月さんの指導は

とても丁寧で解りやすい。

 

 

わずかな時間でしたが

貴重な体験でした。

 

私が知らない文化を

たくさん持っていらっしゃる秋月さん。

 

とても全てを紹介できませんが

純粋な生き方をしようとする姿に

感動しました。

 

やはり日本という国の文化が好きで

守りたいという思いが強いと感じました。

 

なぜ?和服なんですか?

と聞きますと

 

「日本人ですから」

 

と普通に答えられ

よく考えたらそうだなと思いながら、

 

あらためて

この姿こそが日本が生み出した

普通の姿だったと考えさせられます。

 

日本人が日本人の体格や

感性を考えて生み出した「和服」。

 

しかし、「和服」よりも

「洋服」のほうが圧倒的にスタンダードに

なってしまった。

 

秋月さんと話すと

不思議な感覚になりますが

日本人として大切なものを

深く考えさせらます。

 

秋月さんは

日本の伝統を守る大きな役割を

になっていらっしゃるのかも

しれませんね。

 

秋月さんの今後に注目しています。

また、お会いしたいと思いました。

 

いつか

私のほうから連絡してみようと

思います。

 

あ、そうか

とは言え、

携帯を持っていらっしゃらない・・・

 

 

なので・・・

 

 

秋月さんへの

連絡は

 

 

「手紙」ですることにします。

 

 

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3 Comments »

 
  • より:

    ぼくは和歌山の5年生です。
    今日、熊野古道で、秋月さんに会ったので(たぶん)、手紙を出したいけど、
    どうすればいいかわからないので、
    教えて下さい。
    クマもんのシールをもらいました。

  • 一帆 五年生 より:

    6月3日に秋月さんに会ってお話して神奈川から和歌山まで来たと言っていたので、
    凄いなぁって思いました。
    また、会う機会があればお話したいと思います。
    熊本にしかないシールをくれて、ありがとうございました。

  • より:

    たびたび、恐れ入ります。ご丁寧なお返事、ありがとうございました。
    木の母親でございます。
    パソコン苦手で、せっかくいただいたお返事を、間違えて消してしまいました。申し訳ありません。
    子どもが、がっかりしてしまうので、大変申し訳ないのですが、もう一度、送っていただけますでしょうか??学校の帰りに、秋月さんにお会いして、矢立から出した筆で、クマもんのシールにお名前を書いていただいたそうで、うちに帰って、早速お名前を検索して、(秋月さんのお気持ちに反するかもしれませんが(^_^;))こちらのブログを発見し、大喜びしていました。おそらく、熊野詣を徒歩でされる事と思いますので、いつ、戻られるか分かりませんが、とても楽しい出会いだったので、お手紙出したいのだと思います。

    あ、一帆君も、コメントしてる!!一緒に秋月さんにお会いしたお友達です。

 

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