秋月を訪ねて(その1)

 

たった一つの「茶器」が

国一国を も上回る価値観を

有する程になった戦国時代。

 

そんな時代に

 

現在の価値で

数億円とも言われるほどの値段で

やり取りされた

 

伝説の茶器があります。

 

それが

楢柴肩衝(ならしばかたつき)。

 

本日は、そんな

楢柴(ならしば)を所持した

と言われる

 

戦国武将「秋月種実」の郷

福岡県の「秋月」に来ております。

 

 

ちなみに

楢柴(ならしば)は、

初花(はつはな)、

新田(にった)肩衝と並んで

天下三肩衝と呼ばれた茶器で

 

肩衝(かたつき)とは、

肩の部分が角ばっている

すなわち肩が

衝(つ) いていることに

由来しています。

 

 

釉色が美しく

「濃い」色だったことから

「恋」にかけて

 

万葉集の

 

「御狩する 狩場の 小野の

楢柴の汝は まさで恋ぞまされる」

 

「はし鷹の 狩場の鈴の なら柴の

なればまさらで 恋ぞまされる」

 

という歌に因み

楢柴と名付けられた茶器。

 

 

もともとは

足利義政公が所有し、

 

彼の師匠である

「村田珠光」に下賜され、

更に、珠光から弟子の

「鳥居引拙(とりい・いんせつ)」に

与えられます。

 

その後、堺の豪商を転々とし、

天王寺屋宗伯から、

博多の豪商「神屋宗白」が

「一千貫」で購入し、

 

またまた、その後に

博多の豪商「島井宗室」の手元に

「二千貫」で渡った

と言われています。

 

ちなみに「神屋宗白」は、博多の豪商

神屋紹策の弟で、神屋宗湛の叔父に

あたる人物です。

 

 

続いて、これを

ずーっと欲しかった

大友宗麟が

 

何度も使者を送り

「島井宗室」に譲ってほしいと

願います。

 

当然、宗室は

絶対に譲ろうとはしませんでした。

 

ところが

 

ついに

この男から連絡が来ます。

 

 

織田信長です。

 

いよいよ信長から

宗室に連絡が来ます。

 

内容は京都の本能寺での

「名物茶器の披露会」を行う

というもの。

 

つまり、信長公が

「楢柴肩衝」が欲しい

ということですね。

 

いやいや

もっと乱暴なことを言えば

「持ってこい」

「じゃないと殺す」

ぐらいの圧力だったと思います。

 

 

 

しかし、

結果的には

 

「本能寺の変」がおこり、

信長は死亡。

 

 

島井宗室は博多へと帰り、

楢柴肩衝を手放さずに

済みます。

 

 

しかし、

 

九州に帰ると

すぐ、また

大友宗麟からの催促が

始りました。

 

そんな中で

 

この「楢柴」に目をつけた

武将が現れます。

 

 

それが、秋月の殿様、

「秋月種実」公でした。

 

 

結果的に九州において

かなり力を持っていた

「秋月種実」の催促には断れず、

島井宗室は「楢柴」を

彼に手渡してしまうのでした。

 

 

たかが茶器なのに・・・

と考える人もいるかもしれませんが

 

そんな茶器という「芸術」に

命をかけていたことが

戦国時代の面白いところです。

 

また、時の権力者だった

信長さえも

手にいれなかった「楢柴」が

九州の小さな武将の手に入った

というのも不思議な話。

 

なんとなく芸術品とは

人と物の間に「縁」のようなものが

あるようにも思えますね。

 

結果、「楢柴」は

豊臣秀吉のものになり、

 

その後、

徳川家康のものになったのですが

「明暦の大火」のときに

消えてしまったとのこと。

 

芸術は権力者でも

簡単には手に入れられない・・・

「楢柴」が

そう言っているようにも思えます。

 

今では、幻なのですが

武士の美術としては

とても面白いエピソードなので

ご紹介しました。

 

さて、

 

次回は

秋月氏の歴史について学びます。

 

秋月を訪ねて(その2)はコチラ

 

 

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