独浩窯
「衆流截断(しゅうりゅうせつだん)」
何ごとにもとらわれない。
世の中の風潮、流行など一切 気にせず、
一般的な常識をうち破って、ありのまま生きる
そんな「陶芸家」をご紹介します。
ここは福岡県
糟屋郡・「須恵町・佐谷」。
平安時代の初期
遣唐使として中国に渡る際、
筑紫に立ち寄った天台宗の開祖
「最澄」が建立した「佐谷山・建正寺」がある山の奥。
この地に30年前(1983年)、
京都出身の
一人の男性が移り住みます。
その人の名は「池本浩三」。
1946年生まれ。
大阪工業大学・建築学科を卒業後「一級建築士」に。
単身ドイツに渡り、
陶芸家ワルター・ポップ・ベンデリン・スタールと出会い
陶芸の世界に魅せられ、
カッセル総合大学・陶芸学科を卒業。
帰国後、
なぜか・・・
この山と出会い
ここに「独浩窯」を築窯して30年。
陶芸家として生きてきました。
都会から離れた山の奥。
小さな建物を借り、
自分で雨、風をしのげるように手作りし、
「ろくろ」を置き、作業場にしました。
水は地下水。
電気も全て自分で用意。
時代は「高度経済成長」、
田舎から都会に
多くの若者が就職していく時代に
池本先生は、あえて山奥にこもり
「陶芸家」として生きることを選びます。
私が先生に出会ってから
もう20年ぐらい過ぎました。
今でも様々なことを学びます。
私にとって先生は
山にこもって修行した「宮本武蔵」のように見えます。
または、「へちかん(ノ貫)」。
安土桃山時代
武野紹鴎から茶を習い、
山に庵を構えて寓居し、
利休も一目置いたと言われる茶人「へちかん」を
現代に甦らせたような存在。
「へちかん」は
当時盛行していた高額な茶器などは用いず、
独自の茶道を追求し、
釜ひとつで「雑煮も煮るし、茶も沸かす」。
そんな「へちかん」の「衆流截断」な生き方が
「池本浩三」先生と重なって見えました。
美しい花、
鳥の歌、
山で暮らす動物
そんな自然と一緒に30年過ごしてきた先生。
そして、
支えてきた奥様も素晴らしい。
団塊の世代が定年退職を迎え、
老後をどう生きるか?
趣味がない、やることがない
という人の話も聞きますが、
池本先生の
いきいきとした「自然と共存した生活」を見ると
「こういう生き方もあるのだ」と気付かされます。
「少子高齢化」
「年金問題」
「受験」や「出世」など
たしかに人間が考えないといけないことは
「山ほど」ありますよね。
新しく変化する現代社会で
考えたら落ち込んでしまうような
こともあるでしょう。
でも、
この佐谷の山は「最澄」の時代からほとんど変わっていない。
ホタル、
風の音、
雪の中に誕生する「新しい芽」、
月の輝き
この山に入れば
「人間に大切なものは何か?」
「生きる意味とは何か?」
もっと「自然体」でいいんじゃないか?
など色々と考えさせてくれるのです。
池本先生は、30年前からずっと
この生活を貫いてきました。
こちらは
池本先生が一人で作った「登り窯」。
そして
仲間の力を借り、
「自分達で作った」ログハウス。
先生にとっては自分の力で作ることは
「あたりまえ」なんですね。
また、家も陶芸も
ねらって「格好良く見せよう」とか
「人より良いものを作ろう」とか
そんなものに何もとらわれず、
ただ自分らしく作ってきました。
取材も特に受けていないので
おそらく、これが初めて公開される「作陶している姿」です。
自然の中で
独浩窯「池本浩三」の世界は誕生しました。
宣伝することもないのに
どこからか口コミで存在を知って
欲しいと言うお客様達が集まってくる。
素朴で優しい作品が魅力です。
身をたてることに関心はなく、
自然とともに生きる、
地位、名声にも興味なく、
食事と清らかな水、仲間や家族の健康があればいい。
そんな「池本浩三」先生の世界に惹かれて
多くの人達が訪れます。
武士が「刀」を持って修行したように
先生は「土」と「火」で修行してきた。
そんな感じでしょうか。
大変なこともあったでしょうが
逃げずに自然と向き合う
そんな強い生き方に
みんな憧れているのかもしれません。
合うと勇気をもらえる
池本先生の生き方に注目です。
ぜひ、みなさんも一度
訪ねてみてはいかがでしょうか?
たまには自然の中でリラックスしてみるもの
いいと思いますよ。
独浩窯
福岡県糟屋郡須恵町佐谷658
※留守の時もあります。
風のむくまま、気のむくまま。
ご了承ください。
資料:最澄像(国宝)、平安時代( 11世紀)、一乗寺蔵
Wikipedia :独浩窯:池本浩三 作品
北野大茶会図
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