肥後金工の源流を訪ねて(その1)

 

肥後金工の美しさを何と表現したらいいのか。

その答えを

「柳宗悦」の言葉から引用したい。

 

 

「渋い」

 

ただそれだけである。

 

それで充分な働きをする。

この世にはさまざまな美の相があろう。

 

可愛いもの、強いもの、派手なもの、粋なもの、

各々が美しさの一つである。

 

性情により環境により、人はそのいずれかに近づくであろう。

だが、情趣が進めば、いつも辿り行くのは

「渋さ」の美である。

この境に到り得て美は収まるのである。

 

 

美に深さを訪ねるなら、いつかここに来るだろう。

美の奥義を語るさまざまな言葉はあっても、

この一語にすべては尽きる。

 

茶人達は美の趣を、この一評語に託したのである。

 

だからすべての者は、物の美しさを

この言葉で判けばいい。  柳宗悦「茶と美」

 

 

肥後金工を説明するのに

柳宗悦の「茶と美」から言葉を借りたのは、

肥後金工が、「茶道」と深くつながっているからである。

 

ご存知の方も多いと思うが、肥後金工は

利休七哲と言われた細川三斎(忠興)プロデュースによって

生まれた刀装具である。

 

現在、どれだけの茶人が

肥後金工を知っているか定かではないが、

おそらく

発祥の地、熊本・八代に住む人でさえも

知らない人が多いので、あまり知られていない。

 

 

しかし、

利休から極心台子(究極の奥義・点前の所作で最も奥の茶法)を

伝授された円乗坊宗円、古市宗庵の流れを招き、

 

利休の後に茶頭となった

古田織部が切腹の後、

古田家を招いたのも細川。

 

「利休と織部」という大きな茶道の文化を吸収して、

自分なりの「決着」をつけようとした細川三斎(忠興)が

最後に残したものが「肥後金工」だったことを忘れてはならない。

 

しかし、

この細川三斎(忠興)は、現在特集される書籍などでは

茶道家として非常に小さく扱われている。

 

それは、「茶道四祖伝書」(思文閣)のうちの

「利休居士伝書」にある

三斎と古田織部の評価からなったものと考えられる。

 

「数寄というのは(師と)違った工夫をしなければならない。

だから、織部の(個性の強い、革新的な)

茶の湯の作意・創意は大変優れている。

 

一方、三斎の茶は(利休の)作法から一歩も出ず、

寸分違わない。そこで結局、

その名は世間によく知れわたることもなかったのである。

資料:細川三斎(茶の湯の世界)矢部誠一郎著

 

 

しかし、

どれだけの人が「肥後金工」の存在を知っていただろうか?

 

利休が切腹する時、死を覚悟して見送るほどの情熱と、

 

関ヶ原などの戦闘で

本当の「一期一会」を体験した武士としてのこだわり、

その両方を持った

 

細川三斎(忠興)だからこその革新的な

表現がここにあったことを忘れてはいないだろうか?

 

また、何度も言うが

古田織部と細川三斎(忠興)では、

大名としての規模が違いすぎる。

背負っている家臣、領土、役割を考えると

 

三斎は、織部のように茶道だけに

のめり込むことはできない。

 

織部が茶道を通じて「織部焼」に代表される革新的な

表現をするのに対して、

三斎は、あえて武士としての革新的な表現として

「肥後金工」があったと思われる。

 

人を殺すための刀装具に

なぜ?芸術を求めたのか・・・

 

世界で唯一の「芸術」に心が惹かれる。

 

今回、

「肥後金工の源流を訪ねて」と題して

連載するこの企画は、

「次の世代に肥後金工の文化を繋ぐ」ことを目的としている。

そして

細川三斎(忠興)の茶道家として、

芸術家としての美学を多くの人に知っていただきたい。

 

今までの刀剣鑑定の側面からだけでなく

茶道家・細川三斎(忠興)プロデュースの

「肥後金工」の素晴らしさを

世界中の人達に知ってもらいたいし、

その文化を守りたいと考える。

 

個人的な見解もあるが、

全国的にも評価の高い「肥後金工」だからこそ、

地元に住む人間としての貴重な資料や情報を

お届けできればと考えているので

ご了承いただきたい。

 

また、

肥後金工に関する詳しい資料としては

「伊藤満先生」が書かれている

素晴らしい書籍をご紹介したい。

肥後金工の精華公式サイト

 

資料:wikipedia千利休 細川忠興 永青文庫 他

 

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