楽水園(博多の利休文化)
ここは福岡県の「博多」。
今でこそ平和なこの街が400年前、
戦国武将の戦乱に巻き込まれ
焼け野原だった時期があるのをご存知ですか?
この壁は「博多塀(はかたべい)」と言われ
天正15年(西暦1587年)
豊臣秀吉の太閤町割り(戦災復興都市計画)の時に
生まれたデザインです。
焼け野原になった町の焼け石、
寺の瓦などを厚く塗り込められ
博多再興を願って作られたもの。
実際のものは櫛田神社にあり、利休とも交流のあった
博多の豪商「島井宗室」の屋敷跡で三百八十余年の風雪に耐えた
最後の「博多ベい」が移築再建されています。
今日ご紹介するのは
そんな「博多塀」デザインに囲まれた日本庭園
「楽水園」です。
実は博多駅から歩いて10分ほどの場所にあります。
「楽水」とは、博多商人、下澤善右衛門親正(ちかまさ)の雅号。
親正は、父尚正(なおまさ)と親子二代にわたり、家業とならんで
博多の発展に貢献した人物で、この場所は彼の別荘だったそうです。
ここには茶室があり、彼の雅号にちなみ「楽水庵」と名付けて
茶に親しんだことから、戦後、旅館としても使用された時も
「楽水荘」とされたようで、現在は福岡市が整備をして
「楽水園」と命名されています。
池泉回遊式の庭と
本格的な茶室・庭園を備える「楽水園」。
都会の中心部にありながら、清浄な空気が満ちています。
茶室の前に設けた茶庭のことを「露地」と言い、
茶室に入るまでの「道すがら」の意味があり
最初は路地と書かれていたものを千利休が
名付けたと言われています。
禅の言葉で
「煩悩(ぼんのう)」を離脱した境界を意味するそうです。
茶の湯に招かれた客は
露地口から露地に入り、飛び石をつたって中に中に入ります。
待合で休んでいると、気配を察した亭主が中門に表れ
客は中門の奥へ招き入れられます。
そこで蹲(つくばい)で手を荒い、口をすすぎ、
身を清めて茶室へと向かいます。
ここには「水琴窟」と言われる地中に作り出した空洞の中に
水滴を落下させ、その際に発せられる音を反響させるものがありました。
この「水琴窟」は小堀遠州が18歳の時に作り
師匠の古田織部を驚かせたというエピソードがあります。
なぜ?この名前なのかは解っていません。
細川家の菩提寺、
大徳寺・高桐院にある
「利休灯籠」を思い出します。
この「楽水園」を整備している阿部さんに
お話をお聞きしました。
季節ごとの美しさがあり、今からの季節は紅葉が美しいとのことです。
毎日、落ち続ける葉を
丁寧に清掃する阿部さん達がいらっしゃるからこそ
美しい庭があるのだなと思いました。
落ち葉も少しずつ紅くなってきました。
晩秋ですから、朝夕は肌寒さを覚えるようになります。
最近は寒くなってきましたね。
茶道では、
10月は初夏から今ぐらいまでの季節に使う
茶釜を火に掛けて湯をわかす道具「風炉」から
冬に使う「炉」に交代する季節。
その別れを惜しむ心情から
名残の茶が催されるようです。
それでは茶室のほうに行ってみましょう。
博多は利休居士が実際に来た場所。
様々な場所で茶会を開いた記録があり、その文化が残っています。
実際、この場所で利休居士は茶会を開いていません。
しかし、現在も茶道を志す方から愛される名所です。
また、今では本格的な茶室は少なくなっていますので
利休の文化を感じることができる場所として
楽水園は貴重な場所なのです。
さらに、足を進めますと
「にじり口」が見えてきました。
どんなに偉い殿様も刀を置いて
頭を下げて入らなければならなかった入り口。
それが「にじり口」です。
殿様でも誰でも、身分のない世界。
同じ場所を共有する者同士の思いやりを目指す空間。
「直心(じきしん)の交わり」と言われる
心と心の交流が大切とした利休流のコミュニケーション術。
当時としては斬新な発想です。
利休以前の茶道家「武野紹鴎」の時代の古図にも見られますが
やはり世界を完成させたのは利休居士。
自然を感じながら、
ひとときの茶の湯を味わい心を養う。
外は血で血を洗う「戦乱の世」でも、
この空間の中だけは「平和」になろうとした想い。
それが利休居士のコンセプトだったのではないでしょうか?
ここでは入園料と別途で300円払いますと
薄茶とお菓子がいただけます。
家族や恋人同士で行くのもいいと思います。
たまには、この「楽水園」のような落ち着いた場所で
四季を感じながら和の世界を体験するのは
いかがでしょうか?
人と人をつなぎ、
思いやりの心を伝える茶の湯の文化こそ
情報が氾濫した今の時代に必要だと感じた1日でした。
「楽水園」
お問い合わせ「楽水園管理事務所」
住所 〒812-0018 福岡市博多区住吉2丁目10番7号
TEL 092-262-6665
開園時間/午前9時〜午後5時
休園日/毎週火曜日(当該日が休日の場合は、その翌日)
※ただし、1月2日、3日は開園。12月29 ~1月1日は休園。
入園料/大人100円(80円)小人50円(40円)
駐車場があります。普通車300円
※変更する場合があるため詳しくは、お電話でご確認下さい。
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